上級検事執務室1202号室にパンパンと肌のぶつかりあう音が響いている。
ソファで御剣が優木に犯されている音だ。
御剣の両手は頭の上で鑑識員にひとまとめに拘束されていた。
優木の合図で共犯者に豹変したこの鑑識員は、目深に帽子をかぶって俯いており、人相がわからない。優木は「遊び仲間だよ」とだけ説明した。
部屋の反対側にはまだ事件の跡が生々しく残ったままだ。
御剣はその現実をシャットアウトしたいかのように頑なに目を閉じている。
優木は逆にこの異常な状況に興奮しているようだった。
「この鬼畜が…っ」と吐き捨てた御剣に向けた表情は、さわやかなスポーツマンという触れ込みからは程遠いものだった。

「どうかな、先輩。ボクのテクニックは。悪くないだろ?」
「あっ……はっ……はぁ……あああっ」
前立腺をえぐるように突かれ、耐えていた御剣の身体が跳ねた。
興奮した鑑識員がごくりと唾液を飲み込んだのが分かったが、あくまでも御剣の自由を奪う役目を負うだけで、手は出してこなかった。
「あんまり大きな声だすと廊下のイトノコさんに聞こえちゃうよ。それとも彼にも混ざってもらおうか?」
「じょ…冗談、では…ない…っあぁ…! 刑事を…まきこむ、な……っ」
「喜ぶと思うけどなあ、あの人。物欲しそうな顔で先輩のこと見てたし。というか、イトノコさんに助けてもらう気はないみたいだね。まあ、僕に挿れられて勃っちゃってる所なんて見せたくない、か」
べらべらと喋りながらも、優木は御剣を揺さぶり続けている。
優木の言葉通り、前立腺への刺激で勃起してしまっている性器を指でもてあそばれて、御剣は呻いた。
「そろそろかな……鑑識ッ!」
「ハッ!」
「繋がっているボクと御剣検事の姿をカメラのフィルムにおさめて欲しいんだ。記念にね……」
「了解いたしました!」
「なっ…や、やめ……っ、うっ…くぅ……はあぁっ!」
パシャ! パシャパシャパシャ!
連続したカメラのシャッター音とフラッシュに、為すすべもなく晒された。
鑑識員がカメラを構えたため手が自由になった御剣は、痺れている腕を懸命に動かして顔を隠した。
しかし、男に犯されて達した淫らな表情は、すでにフィルムに焼き付けられた後だった。
「イッた顔、撮られちゃったみたいだね、先輩。何枚焼き増ししてほしい?」
優木は笑いながら恐喝犯の顔をのぞかせた。

その後、優木は相棒殺しを立証され逮捕されたが、鑑識員はいつの間にか姿を消していた。
あの鑑識員は誰なのか。あの写真はどうなったのか。
積極的に調べる気も起きず、忘れようとした御剣だったが、しばらくの間は悪夢の種になった。



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