SIDE:M---------
ことの始まりは、地方の遊園地で行われたトノサマンのヒーローショーで起きた。
ショーに来ていた子どもや親を人質にとって立て篭もる事件。
怪人役の中に入っていたアルバイトの青年が目的は不明だが、凶行に走ったのだ。
たまたまショーを糸鋸刑事と見に来ていた私は犯人によって封鎖されたステージに取り残された。
多くの大人を犯人がステージから追い出す際、検事であることを名乗り出、私は怯える子どもたちの身代りになったのだった。

もちろん、他の者さえいなくなれば、あとは自分の身のみ。
私自身の体が多少傷つこうとも、それは些細なことでしかない。
それに相手が一人であれば、いざとなれば多少腕に覚えがある自分なら取り押さえられると思っていた。
人質が全員外に出れば、糸鋸刑事にも応援に来た刑事たちとともに突入するようにと、ひそかに命令もしていた。
しかし、なぜかあっさりと了承した犯人に、なんとかなりそうだと安堵を覚えたのも束の間、同じように人質としてステージ外へ脱出したと思っていた他の怪人の着ぐるみに入っていた男数人が共犯者としてステージに戻ってきたのだ。

多勢に無勢で、ろくな抵抗もできず数人の男に抑えつけられ、裸に剥かれる。
武器を持っていないかという身体検査だと言っていた男たちの行為はやがて明らかに手淫と呼べるような動きに変わり、複数の手に前を掻かれたり、敏感に震える胸の先をはじかれる。
悔しそうに顔を赤く染める私の反応を悪趣味にも楽しんでいるようだった。
私は自分が反撃のタイミングを完全に逃したことを知る。

こうなってしまってはどうすることもできない。
あとは、仲間を連れて突入してくるはずの糸鋸刑事にかけるしかなかった。
このような醜態を見せるのは、いかんともし難い屈辱だったが、仕方がない。
男たちのからかいを含んだ性質の悪い悪戯に私はひたすら声を殺して耐えた。

だが、時々聞こえる私の呻き声に耐えきれなくなったらしい糸鋸刑事が他の刑事の応援を待たず、突入してきてしまったのだ。
刑事は、拳銃を持っていたし、犯人は一人だと思っていたのだろう。
複数の男に組み敷かれ、敏感なところを弄ばれている私の姿に一瞬呆けたように動きを止めた。
当然、入口を見張っていた男二人に取り押さえられ、私を人質にとられた刑事は抵抗もできず二人に殴られ蹴られた。

「やめろ…やめたまえ!私がすべての人質の身代りになったはずだ」

刑事のこめかみから血が流れるのを見て、私は必死に男たちに暴力をやめるよう願った。

「よーし、じゃあ検事さんよぉ。こいつを使って俺達を楽しませな」

ぽいっと、目の前に投げられたのは、今回のショーで売られていたトノサマンの抱き枕だった。

「な、にを…」



言っている意味が分からず、男たちの顔を見返す。

「こうするんだよ」

両脇の男に力の入らない体を無理やり抱えあげらた。そのまま、トノサマンの抱き枕の上に跨がされ、上から抑えつけられた。
憧れているヒーローがプリントされた抱き枕に下着もはかず、無理矢理とはいえ、こんな風に押しつけてしまうなんて。
抑え込んだように密やかで厭らしい嘲笑の中で、もはや心が壊れそうに震えていた。
せめて、これが彼の目の前でなければ…
横目でチラリと見やれば、顔に痣を作り、口の端から血を流す刑事が私の名前を必死に呼んでいる。

「うぅ…みつ…!御剣検事…!」

いっそ、こちらを見ないでくれ
いっそ、名前を呼ばないでくれ

「余所見をするとは余裕じゃないか」
「っひぅ…ん」

男が手に持っていたナイフの柄で顎を無理やり上げさせられる。
ぐっと、喉元を抑えつけられ、首を絞められるような圧迫感に思わず呻いた。
苦しそうな声にますます刑事の声は切羽詰まる。しかし、そんな必死の声も聞こえてないかのように、男は柄を益々押しつける。

「検事さんはトノサマンが好きなんだろ?大人のくせに。俺たちいっつもあんたがその目立つヒラヒラの服でショーを見に来てたこと知ってたんだぜ」
「や…う…」
「さあ、こいつの上でやらしく腰を振って俺達を楽しませてくれよ」

理解の範疇を超えていた。
だが、先ほどまで弄ばれていたそこは、敏感になっており体を上から抑えつけられるだけで、意志に反して透明な液体を零してしまう。
大切な、自分にとっては特別な意味があるトノサマンの抱き枕に自分の先走りが滴る様子をみて、顔がサッと赤くなる。

「いやだ…!やめ…」
「へえ、じゃあこの刑事さんはどうなっちゃってもいいんだ?自分の立場をわきまえろよ」

男が刑事の鳩尾に痛烈な蹴りを入れる。
苦しそうな刑事の声に、私は男たちの言う通りにするしかなかった。

「うっ、う…く…」

抱き枕に跨って擦りつけるように腰を動かすことを強要され、達するには足りない中途半端な快感と、糸鋸刑事や男たちに見られているという羞恥で頭がどうにかなりそうだった。
いつまでこのような恥辱を受けなくてはいけないのか。

「おっと、歯をたてるなよ」

銜えこまされた男たちの欲で息が詰まりそうだった。
男が快感を隠そうともせず腰を振い、「うっ」という呻きと共に男の欲望が私の顔に弾けた。

「けん…じ、自分のことはもういいッス…!自分は…」
「ぃひ…ぁうぁあああああ」

刑事が状況に耐えきれず声をあげた途端、先ほどまで私の口腔を支配していた男が一度も達していない私のそれを踏みつけた。
頭が真っ白になり、はじけた熱が、ポタポタと抱き枕に降り注ぐのを薄れる意識のなかで見た気がした。



SIDE:I---------
長年、御剣検事のもとで働いてきたことに誇りを持っていた。
強がっていても、どこか脆いところのある彼のことを守ろう。
さまざまなあらゆる攻撃や危険から、自分が盾となり守ろう。
そう誓っていたのに、自分がおかしてしまった失態のせいで、今目の前で検事が凌辱されている。
検事さえ助かるのなら、自分はどうなってもいいとさえ本気で思った。

しかし、そう声をあげた途端、からかうようだった男が急に暴力的に検事のそれを踏みつけた。
見たこともない色っぽい顔で、震えながら達し、そのまま気絶をしてしまった検事に、自分はまた失敗してしまったのかと心底嫌気がさした。

「おい、見ろよ。このおっさん」

自分を抑え込んでいる男がいかにも楽しいというように笑った。
明らかに蔑む色を思った声に不快さが増す。

「あンたたち、検事を放すッス…、自分はどうなってもかまわねぇッスから…」

ボロボロの体で、懇願する自分を嘲笑うかのように、気絶してぐったりとした検事の体を仰向けにして、男たちは見せつけるように足を開かせた。
白く滑らかな足の間にある、それは自分のものとは別モノのように、ツルツルとしていてピンクで滑らかで…

「このおっさん、口でいい事言ってるくせに勃ててやがんぜ」

そう指摘されてはじめて、先ほどから感じていた下半身の違和感に気がついた。
凌辱されている検事の姿に、自分は確かに欲情していたのだ。

「こ、これは…違…」

途端、自分のこの想いが酷く穢れたもののような気がして、恥ずかしさと情けなさに言葉が出なかった。
守りたいと誓った者を目の前で凌辱されながら、欲情するなんて。

「何が違うんだよ、おっさん。こいつをヤりたいんだろ?使わせてやってもいいぜ。俺たちも要求が通るまで時間があるからな」

この状況に対応できない自分のズボンのジッパーに手をかけ勝手に寛げていく男たちに、無理やり立ち上がらされる。
散々受けた暴行は下半身に来ており、膝に力が入らない。
それでも引きずられるように意識のない検事の白い体の上に覆いかぶさるように投げ出され、触れた肌の意外な熱さに、下半身に欲が籠る。
もう、言い逃れはできない。

「さあ、俺たちの前でショーを見せてくれよ。面白かったら命だけは助けてやるよ。これ使わせてやる。俺たちは優しいだろう」

リーダー格と思われる男が、ワセリンを投げつけてくる。
検事と自分の命、どうしようもなく感じている欲望、持て余す熱。
抗えるわけがなく、検事の白い太ももを持ち上げた。
おそるおそる、検事の奥まったピンク色のそこへ舌を押しつける。
汚いなんて全然思わない。舌が少しだけ侵入する度、意識を失っているはずの足がピクンと跳ねる姿があまりに扇情的でやがて行為に没頭していった。



SIDE:M---------
他人に触れられることなど滅多にない場所にぬめりを帯びた違和感を感じ、私の意識は徐々に浮上した。

「…ん…あ?」

濡れた音が自分の足の間から聞こえ、普段は見ることのない刑事の頭のてっぺんが見える。

「ぁふ…なにを…けい、糸鋸刑事…っやめ」

刑事が自分のそこを舐めている。
衝撃的な状況に、一気に覚醒する。

「すまねぇッス、こうするしか…」

まるで自分に言い聞かせるかのように、こうするしか…と謝りながら刑事は何かのクリームを指で掬った。
状況が飲み込めないが、自分が気絶しているうちに、この屈辱的で淫猥な行為に刑事も参加させられているようだ。
何かを盾にとられての行為だろうことは、先程の自分経験からもよくわかった。
だが、だからといってそう簡単に受け入れられることではない。

「っう…あぅ、やめ…」

刑事の太い指が私の中を抉り、半ば強引に挿出する。
圧迫感とともに、強制的に熱を引きずり出される感覚に、腰が砕けそうだった。
数人の男たちが嘲笑う中で、行っている行為に、萎えるどころか恥辱からさらに熱くなる。

「みつ、るぎ…検事…っ」

切羽詰まった刑事の声。
足を抱えあげられ、後ろに熱いものを押しつけられたと思った瞬間、今までとは比べ物にならない圧迫感が襲った。

「っぐ…っあぁ、やめ…、あぅ、あっ、あ」
「検事…っけんじ…!」

荒々しく突き上げられ、私の足はまるでマリオネットのように揺れる。
もう、まわりのことを気にする余裕はなく、ただ、与えられる熱を受け止め続けることしかできなかった。
どれだけ時間が経ったのかも分からない。
何度めかの刑事の熱を体内で受け止めた時、朦朧とする意識の中で、男たちが話す声がわずかに聞こえてきた。

「…警察側が了承したらしい」
「…よし、目的は達した」

まだ緩々と腰を動かしていた刑事の後頭部を男は何かで殴りつける。
気絶した刑事の大きな体が被さってきて、ただでさえ力の入らない体では押し返せるわけもなく、そのまま身動きがとれなくなってしまった。
体内で主張する刑事のそれを抜いてほしいし、殴られた刑事の安否も確かめたいのに、声が掠れて言葉が出ない。

「検事さん、楽しかったよ。また近いうちに会おう」

そう、耳元でぼそっと呟かれ、私は辛うじて保っていた最後の意識も手放した。




事件は犯人側の要求を警察がのんだ形で幕を下ろした。
しかしそれは、国家権力が犯罪者に屈するということになるため、この事件はこのままなかったものとして隠ぺいされることになった。
当事者である私と刑事も詳細は知ることができず、裏で行われた取引も分からないまま、お互いに忘れることのできないしこりを残す形となった。
後から聞いた話だが、あの事件を境にかつてトノサマンとして活躍していたが罪を犯し服役していた王都楼真悟が刑務所から姿を消したという話だ。
このことがかの事件と関係あるのかはわからない。

ただ、私の耳には“また近いうちに会おう”という男の不吉な言葉がこびりついて離れなかった。








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