おかしい。力が入らない。頭がぼうっとする……。
御剣はティーカップが指からすり抜けていくのを感じた。その感覚もすでに遠い。
カップとソーサーがぶつかりあう耳障りな音にハッとして少しだけ意識が戻った。
そうだ、アレバスト王国の大使執務室で大使と話をしながら、出されたお茶を飲んでいたはずだ。
バカな――何か、盛られた?
「効いてきたかね? アレバストには独特の薬草が多くあってね……。意識の混濁、筋肉の弛緩をまねく物もあるのだ。心配しなくてもいい。すべて一時的なもので後遺症や中毒性はない」
嘲りを含んだカーネイジの声を聞きながら、御剣は引きずられるようにして隣室へ連れ込まれた。
そこは休憩室になっていて、軽く眠れるようにと簡易ベッドが置いてある。
腰が曲がっているはずのカーネイジ大使が、自分の身体をベッドの上に簡単に持ち上げるのを、御剣は呆然と感じていた。
カーネイジはもはや弱々しい老人ではなく、堂々たる体躯を持つ軍人の正体を現していた。
「薬が抜ければ記憶も残らないはずだ。そのほうが幸せというものだよ。これからキミの身に起こる事を考えればね……」
「なに、を……やめ……っ」
のしかかってくるカーネイジに向けて手をかざし逆らったが、仔猫がじゃれつくほどの効果しかなかった。
カーネイジはその手を避けようともせず、御剣のあえかな抵抗をむしろ楽しむかのようだった。
「おとなしくしたまえ……。悪いようにはしない」
「……あっ……あ……ふぁっ……んんっ……!」
あっという間に服を脱がされ、張りのある若い皮膚の上をぬめった舌が這う。
御剣にまともに思考する力は残されておらず、己の手に当たる他人の身体の感触と、ぼんやりとしか機能しない視覚や聴覚を頼りに、状況を把握するしかなかった。
人を従わせる響きを持つ低い声、ほとんど白く見えるグレーの髪、生きた年月だけシワを刻んだ肌、老いの特徴を裏切る胸の厚み、高級な衣服の手触り……。
「……せんせ……?」
「先生、だと?」
カーネイジは御剣の身体をまさぐる手を止めて、顔を覗き込んだ。
目は合っても、意識はカーネイジを捉えておらず、遠いどこかを見つめているようだった。
「……ふん、まあいい。誰と間違えているのか知らないが、おとなしくなったのは好都合だ」
見せつけるように下半身を露わにしたカーネイジは体勢を入れ替え、どこかうっとりした顔つきの御剣に命じた。
「腰が悪いものでね……。乗ってもらおうか」
手を添えて誘導してやると、御剣はのろのろとだが従順にカーネイジの腰に跨った。
「膝で立て。そうだ。体重をかけるんじゃないぞ。ゆっくり腰を降ろせ……」
「ふっ……あ、ああっ……あう……」
年齢を考えれば驚異的なカーネイジの勃起を、御剣の穴はズブズブと根元まで銜え込んでいった。
「あ……ふぁ……ああ…っくぅ」
「ずいぶんと熟れた身体だな……。何をぼんやりしている? そら、動きたまえ」
パシンと尻を平手打ちされて、御剣は「せんせい……」と涙声で呟き、腰を動かし出した。
尻を振るたびに、長大な肉棒が御剣の肛門のなかに隠れたり現れたりする。
その様子をカーネイジは好色に細めた目で満足げに観察した。
「んっ、あっ……はぁ……はあっ……ひあぁっ!」
「うっ……ああ、いいぞ……。目をつけた通り、キミの身体は最高だ。検事くん」
少しだけご褒美をやろう。と、カーネイジは御剣の尻が降りてきたタイミングで腰を突き上げた。
「うあぁあぁっ! あっあっあっ、ひっ……やぁ……っ! はぁっはぁっ……あぅう……いいぃ……!」
軍人の強靭な腰のバネに、感じるところを突き荒され、御剣はあっというまに上り詰めた。
「ひっ……ひぃ……っ! あっあっ、イク、イキます、せんせっ、もう……ッ」
ガクガクと身体を震わせながら御剣はカーネイジの腹の上に放った。
己の胸に伏せてぐったりとしている御剣を何度か揺さぶったあと、カーネイジも御剣の中に吐精した。
「尻だけで達するとは予想以上だ……次は薬を盛る必要はないかもしれないな」
ざらついた掌に尻を揉みしだかれるのを感じながら、御剣は意識を手放した。