12月27日 午後8時 留置所

薄暗い部屋に細長い明かりが差し込んだ。
部屋の隅、うずくまるようにしていた御剣は緩慢に顔を上げる。
逆光でそこに立つ相手の顔は黒く塗り潰されている。
四角く切り取られた外の空間は鈍い光に満ち、まるであのエレベーターの外を覗くかのようで
御剣は胃が重たくなるのを感じた。

御剣怜侍、面会だ

警官はそう告げる。
おかしい。面会の時間はとうに過ぎている。
だが疑問を口にすることも面倒で御剣は立ち上がる。疲れていた。
殺人の容疑で逮捕されて2日。眠れるわけもない。
悪夢は止まることを知らず、御剣を苛む。いや、既に、悪夢は現実となっているのかもしれない。
かつて父を殺したのは自分であると。
いい加減、罪を認めろと。

手錠を付けられ面会室へ赴く。廊下を渡りながらあの弁護士のことを思い出していた。
御剣を信じると言い、御剣が15年かけて育んだ悪夢を信じないと言った。
あの力強い、燃えるような瞳。
真っ直ぐに見つめられるとそれだけで心臓が貫かれる気がする。
成歩堂は御剣の傷口を暴こうとしている。それがたとえ正しい選択だとしても
御剣が忘れようとした痛みを呼び起こし、血を流れさせる。
成歩堂の重い信頼と、その奥に宿る炎のような感情、
それに応えるべき術がわからず御剣は頭を振って思考を追い払った。

面会室に入った御剣は息をのんだ。
透明な強化ガラスの向こうには誰もいない。面会を監視する警官もいない。
ただ、御剣が座るはずの椅子に男が一人座っている。
硬質な蛍光灯の明かりに照らされて、重厚な存在感を醸し出すその男は。
「局長…」
「やぁ、御剣ちゃん、泳いでる?」
場違いに明るい声。陰影のついた彫りの深い笑顔が禍々しい。
「ちょっと、君とお話ししたくなっちゃってさ。」
厳徒が立ち上がると同時に御剣の背後のドアが音を立てて閉じられた。
カチャリ、鍵の掛かる音。
「…私に何かご用でしょうか?」
「言ったろ?お話ししに来たって、冤罪と過去に怯える君とね。」
「私は怯えてなど」
厳徒が一歩近づく毎に御剣は距離をとろうと壁沿いに移動する。
怯えてるじゃないか、眼鏡の奥で御剣を睨みつけたまま
厳徒は面白そうに笑った。


「君の運命は明日決まるんだよね。証拠も証言も君の先生も、皆が君を有罪にしようとしてる」
「…成歩堂が、私を弁護してくれます。」
「ふぅん、君はどうなりたいの?相手は君の先生だよ?僕には、君は無罪になりたくないように見えるけど?」
いつの間にか御剣は部屋の角に追い詰められていた。
厳徒の威圧感のある体が御剣の視界を塞ぐ。
どん、と厳徒が御剣の横に左手をつく。
御剣は俯いたまま、小さく震えている。
「す、全ては成歩堂の弁護に、任せます。」
「あの新米弁護士?」
ふっ、と御剣の耳元に厳徒の口が寄る。耳に直接声を吹き込むように囁く。
「君は彼を恐れている。」
「!」
厳徒が御剣の後ろ髪をひっぱり無理矢理上を向かせた。
痛みで顔を歪める御剣に厳徒は狂暴な笑みを見せる。
「彼は君の心に土足で入り込み、欲しいままに君を蹂躙しようとしている」
御剣の足の間に自らの左足を割り込ませる。
「君のそれは被捕食者の恐怖だ、だけど君はそれを期待している」
太ももで股間を押す。
「君は本当は捕らわれていたいんじゃないの?
過去とか罪とか君の先生とか君を踏みにじる何かに!」
「局長!!」
悲鳴は厳徒によって無惨にも飲み込まれた。
喰らいつくような厳徒の肉厚の唇が舌が、御剣の口を塞ぐ。
更に後ろ髪を引かれ、力ない口腔に唾液が溜まる。
「んっ、ぐ…」
呻きながら手錠がはめられたままの手で厳徒の胸を押すも、びくともしない。
「だからね、君がもっと早く僕のものになればよかったんだよ、ね?」
そしたらこんなことにはならなかったのにね。厳徒は御剣を壁に押し付け、シャツの下へ手を這わした。
「き、局長、局長!」
まるで子供のような情けない声が出る。厳徒はさも愉快そうに笑う。
「ま、楽しもうよ、御剣ちゃん。」


革手袋が御剣の体を弄る。乳首を押され、こねられ、ふっくらと立ったところを
きつく摘まれた。厳徒を押しのけようとした手は図らずも、その胸にしがみつくようになる。
「御剣ちゃん、乳首立ってるよ?」
「ん…っ、っ」
体内を走るざわめきをやり過ごそうと顔を背けると、
露わになった首筋にしゃぶりつかれる。
「じゃあこっちも勃たせようか。」
御剣の滲む視界で厳徒が笑う。雄の匂いに包まれ、怯える御剣はどうすることもできなくなっていた。
無骨さとは裏腹に巌徒の指は器用に動き、下着へと侵入する。
「や…止めろ…」
「御剣ちゃんの、捕まえた。」
御剣の性器を取り出すと、厳徒は性急に扱きだす。
根元から竿を擦り、親指と人差し指で先端を刺激する。
指の腹を頂点の穴にこすりつけると、御剣は戦慄いた。
ここ数日無縁だった性的な興奮が形として現れる。
ぷくぷくと零れ始めた透明な液は、厳徒の手袋の滑りをよくしていく。
「御剣ちゃん、固くなってきたし、濡れてるよ、気持ちいいの?」
「あ、あ、」
「ねぇ、僕の前でイって見せてよ。」
厳徒は御剣の顎を掴み、正面を向かせる。屈辱と快感に目尻は赤く染まった
艶のある表情は法廷の天才検事からは程遠い。
「あ、ああ…っ!」
ぎゅっと閉じられた目から涙が落ちる、と同時に御剣の性器が
びくりと跳ね、厳徒の手の中に射精した。
黒い革手袋にどろりとした精液が纏わりつくのを厳徒は御剣に見せつける。
「呆気ないなー、ほら、結構濃いね。久しぶりだからかな?」
崩れそうになる御剣の腰を抱きながら、厳徒は汚れた手を更に奥へ伸ばす。
「局長、お願い、します、もう止め、ひ…っ」
ずぶりと無遠慮に肛門に指が差し込まれ、御剣は喉を反らし、
内臓が押し上げられる感覚に厳徒のスーツを皺になるほど握りしめた。
「ふーん、君の中こうなってるんだ。」
厳徒は悶える御剣をにやついて観察する。
その張りを確認するように内側の壁を押し、蠢きに逆らって指を突き立てた。
「あぅ、う、…っ」
二本、三本と指が増やされて中でばらばらと動く、三本の指がぐっと
別々の方向に開くとぱくりと肛門が拓かれ、御剣は堪えきれず涙を流した。
「御剣ちゃん…いい顔するね…ゾクゾクする。」
厳徒の荒い息が御剣にかかる。
「じゃあ、イイ所を擦ってあげようか?…僕ので。」
言うやいなや、厳徒は指を引き抜き御剣を後ろ向きにさせ腰を引き寄せた。
厳徒に向けて尻を突き出す格好になった御剣は叫ぶ。
「局長!」
厳徒は振り返ろうとした御剣の頭を壁に打ちつける。
「もう、大人しくしてなよ。」
厳徒は御剣の尻を左右に広げ、指で掘り返した肛門に自らの性器をあてがう。
赤くひくつく縁に厳徒の亀頭が食い込む。
「御剣ちゃんがいやらしいから、僕年甲斐もなく興奮しちゃった。僕の大きいけど我慢してね。」
「ひ、あ、ああああっ!!」
狭い肉壁を割って厳徒の膨れ上がった性器が御剣へ挿入される。


弾力のある中は巌徒の形に拡がりながらも、押し返そうとぎゅうと締め付けてくる。
厳徒は陰毛を御剣の尻に擦り付けながらゆっくり腰を回し、
その粘膜の蠕動を味わう。
「ああ、イイよ君。温かくて、きつくて。じゃあしっかり踏ん張ってね
今から動くよ!」
ほら!と、厳徒は挿出を始める。
御剣の腰を掴み、ごりごりと肉壁を擦り上げる。
「あぅ、はあ、ん…っ!あっ!あっ!」
破れるのではないかと思う程力強く肉棒で貫かれ、
御剣の体はそのたびに壁にぶつかる。
どんどん膨張していく厳徒の性器は、まるで独自の意志を
持った生物のごとく脈打ち御剣の中を濡らす。
喘ぐ御剣の視界に手錠が入る。
鈍く光り、揺さぶりに合わせてカチカチと音を立てる、自分を捕らえる理不尽なもの。
そうだ、囚われ続けることは自身が望んだことだった。

「…考え事?いけないなあ?」
厳徒が御剣の片足を抱え、挿入の角度を変える。その拍子に前立腺を擦られ御剣は悲鳴を上げた。
体中の血液が逆流し下半身が電流を流されたように痺れる。
「あああっ!局、長…局長っ!」
ぐちゅぐちゅと体液が混ざり合う。
股を大きく開かされ、体を支える片足はがたがた震えるばかり。
厳徒は勃起に肉襞を絡めとり、内臓ごと引き抜く勢いで腰を引き、
もう一方の腕で、御剣を扱く。
熱に漲る肉襞は窄まったものの、抜かれた厳徒の滾りを期待し、ぴくぴくと痙攣する。
「き…局…長、も…もう」
前も後ろもふしだらに濡らし、御剣は啼きながら厳徒を振り仰ぐ。
「いいよ…御剣ちゃん…」
入口に引っ掛けていた雁首を厳徒は激しく奥へ突き込んだ。
「ぅああああっ!!!」
体を反らして御剣は射精し、ぼたぼたと壁や床を汚す。
厳徒が吐き出した精液は渦を巻き濁流となって御剣へと流れ込む。
崩れる御剣を床に突っ伏させ、厳徒は更に何度か御剣を揺さぶると
ようやく性器を抜き取った。

「楽しかったよ、御剣ちゃん。明日が楽しみだよね。」
巌徒はぐったりとした御剣を一瞥し、天井に吊された監視カメラに鋭い視線を投げた。
「君の先生はなかなかいい趣味をしているよ、本当、僕も大概だけど悪趣味だよね。舞台の整え方がうまい。」
カメラを睨み付けた巌徒は体裁を整え部屋を出て行く。

御剣は冷たい床に転がったままぼんやりと天井を見つめている。
倦怠感に泥む体はこのままどろどろに溶けてしまいそうだった。
審理は明日。全てが決まる。


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