「御剣さーん。御剣怜侍さーん。診察室へどうぞー」

ナースに呼ばれて立ち上がる。
診察室の扉の前に立ちノックすると、中から男性の声が返って来た。

「どうぞ」
「失礼します」

扉を開けると、50代くらいの白衣を着た男性が机に向かっている。
私に気づくと椅子を回転させ、こちらに向き直った。

「御剣さんですね。巌徒さんから話は聞いています」
「よろしく願いします」
「どうぞこちらへ」

机の傍の丸椅子を勧められ、腰掛ける。

「で、今日はどうされましたか?」
「ここ数日風邪っぽかったのですが…今日になってとてもだるく…熱っぽいのです」
「そうですか。じゃあ口を開けて」
「はい」

金属のひやりとした感触が舌を押さえ付ける。ライトで喉の奥を照らされる。

「うーん、風邪かもしれませんねえ。熱は測りましたか?」
「いえ、まだ…」
「じゃあついでなので、色々診ましょうか御剣さん。お時間ありますか?」
「時間は大丈夫です」
「では、これに着替えてその診察台に掛けて下さい」
「えっ、着替えるのですか?」

手渡されたのは薄いブルーの診察着。前開きのごくシンプルなものだ。
気軽な気持ちで診察に来た私は、問診をされて薬を処方してもらう程度だろうと思っていたので
正直少し驚いた。

「風邪は万病の元。お仕事がお忙しいでしょうから、この機会に色んな検査をしましょう」
「はあ…」

巌徒局長からの紹介という事もあり、断れる空気でもなかったので素直に従うことにした。

「あの、着替えはどこで…」
「ここでどうぞ」
「ここで?」
「できませんか?」
「い、いや…」

渋々服を脱ぎ始め、診察台の傍に置かれた籠の中へ脱いだ服を畳んで入れて行く。
それにしても、妙に視線を感じる。ちらりと医師の方を見やると、着替え中の私をじっと見つめている。
居心地の悪さを感じながら、できるだけ手早く着替えた。途中で、医師が声をかけてくる。

「あ、御剣さん下着は外して下さいね」
「えっ?」
「診察着の下には何も着けないでください。診察の妨げになりますから」

―そういうものだろうか。

腑に落ちないが、言われるままに下着を脱いだ。
素肌に診察着だけを身に付けた状態の私に、医師は診察台を指し示す。


「お掛けください」
「はい」

椅子の形をした診察台だった。変わった形だな、と思った。
ちょうど尻を乗せる部分が妙に浅い作りになっている。
診察台に掛け、肘掛に両手を無意識に乗せた。その時、背後から音もなくナース二人が近寄った。
彼女たちは驚くような素早さで、私の両手を肘掛に固定する。

「何をするっ!」

驚いて声をあげる。両手は黒いテープでしっかりと肘掛に固定されている。

「これはどういうことだ!」
「落ち着いて下さい御剣さん。診察は多少痛みを伴う事があります。
 その時体が動いてしまうと危険なので、こうして体を固定するようにしているんです。」
「しかし…」
「何も心配はありません。みなさんこうやって診察を受けられるんですから」
「…そう、ですか…?」
「危ないですから足も固定させてもらいます」
「えッ…」

先ほどのナース2人が今度は椅子に足を固定する。胸に不安が渦巻く。

「それでは御剣さん、診察を始めましょうか」

医師は私と向かい合うように丸椅子に掛ける。
そして、診察台に付いているスイッチのようなものを押した。
すると、診察台がゆっくりと動き出した。
椅子ごと後方に向かって倒れ、垂直に立っていた体が仰向ける格好になる。

「なんですかこれはっ!」
「ご心配なく。」

さらには、両足を乗せていた部分が左右にゆっくりと開く。
足を固定されているのでそれに合わせて私の足も左右に開く。

「こ、これは一体…!」
「隅々まで診察できるようにしているのです」

まるで分娩台に寝かされているようだ。
最後に診察台の高さがゆっくりと上がった。仰向けになり足を開かされた私と、
椅子に掛けた医師の目線との高さが同じくらいになった所で上昇は止まった。
医師のすぐ目の前に、今は診察着で隠れている私の陰部がある。

「先生…恥ずかしいのですが」
「私は医者ですから、恥ずかしがる必要はないのですよ」

さらには、2人のナースにより私の診察着が解かれ左右に開かれた。

「ちょ、ちょっと…!」
「着たままでは診察ができませんから」

診察着は素肌に着ていたので、裸に剥かれ足を開いたはしたない姿があらわになる。
羞恥で顔が熱く火照る。しかし両手両足を拘束されたままでは、どうしようもない。

「ではまず…心音を確かめましょう」

医師は立ち上がり、私の真横につく。
聴診器を耳に挿し、音を拾う部分―チェストピースを私の胸にあてがう。ひやりとした金属の感触。


医師はひたひたと私の胸部にチェストピースを這わせる。
それは次第に私の胸の突起部分を集中的にまさぐり始める。
金属部分で強く押され、端の部分で引っ掛けられてピンピンと弾かれる。
そうかと思えば触れるか触れないかというかすかな感触で撫でられる。
その動作に強い違和感を覚えるが、なにぶん医療には素人である。強くも出られず黙りこむ。
チェストピースは執拗に私の乳首だけを弄る。
これは治療なのだ、と自らに言い聞かせるが敏感な部分の事、次第にぷっくりと膨らみ始める。
同時に生まれてくる快感。私は焦った。何とかして自らを律しようと努める。
そんな私の焦りをよそに、医師は聴診器で私の敏感な部分をねちねちと責め立てる。

「あ…あの、先生…その…あまり…一箇所ばかりに触れないでいただきたいのだが…」
「おや、どうしてですか?心音を聞いているのですが」
「いや…あの…」
「それより御剣さん、だんだん鼓動が早まって来ていますね。これはどういうことでしょう」

どきりとした。
執拗に責められる乳首は痛いほど勃っている。最早少し触れられただけでびりびりと快感が走る。
その刺激によって下半身に熱が集約している。恥ずかしながら少し反応し始めていた。
これ以上触れられると…まずいことになる。

「あの、少し熱が上がって来たのかもしれません。今日のところはこれで…」
「それはいけませんね。すぐに治療しましょう」
「いや、あの…」
「肌も火照ってきましたしね。きっと熱が上がっています。測りましょう」

医師は私の下半身の方に移動した。
裸に剥かれ開脚させられた私の恥部が、医師の目に晒される。
反応しかけている性器を見られるのがたまらなく恥ずかしかった。
どうか気付かないでくれ、と切に祈る。

「では御剣さん、体温を測ります」
「はい…」

ナースが医師にチューブを手渡した。医師はそれを受け取ると、中身を手に取る。

「力を抜いて下さい」

医師の指が、私の肛門を開いた。

「な、何をするんですか!」
「熱を測るんですよ」
「何故そんな場所を…!」
「熱というのは直腸で測るのが一番確実なんですよ。赤ん坊や動物にもそうします」
「わ、わたしはいい!」
「うちには直腸用の体温計しかないんですよ。それとも、それ口に入れますか?
 まあ都度消毒して綺麗にはしていますけどね。いやでしょう?」
「…直腸でお願いする。」

医師はゼリーか何かを指に取ったようだ。その指を私の肛門に挿し入れ、くちくちと動かす。

「あの…何をして…」
「体温計が正確な位置にスムーズに入るように準備をしているんです」

果たしてそのような事をする必要があるのだろうか、と思いつつも黙って従ってしまう。

「んっ」
「おや、どうかしましたか」
「…い、いえ」

医師の指が私の前立腺を擦り、思わず声をあげてしまった。顔がかあっと熱くなる。
しかし医師の指先が妙にその部分を擦って来る。別の部分を撫でていたかと思えば、
不意に前立腺を擦りだす。焦らされているようで、むやみに快感が高まる。

「ん…ふ…」
「少し呼吸が乱れてきましたね。しんどいですか?」
「あ…あの…はい…」
「熱を下げる座薬を処方しましょうか」
「座薬…ですか」
「解熱には座薬が一番ですからね」
「はあ…」
「座薬を入れるので、直腸をもう少しほぐしましょう」
「え…あっ…んっ」

医師が挿入した指を増やしたようで、穴が拡がる。
気がつけば、ペニスはあからさまに勃起してしまっている。
仰向けに寝かされ股を開かされた全裸の私が、肛門をまさぐられ性器を勃起させている。
これではただの変態ではないか。激しい羞恥に頭がくらくらする。
今すぐ逃げ出したい衝動に駆られるが、診察台に固定されているためそれも叶わない。

「君、あれを」

医師がナースに指示を出す。ナースが用意したものを医師に手渡す。
顔をあげて見てみると、銀色の不思議な形をした器具だった。

「先生…それは?」
「これは肛門鏡です。せっかくですから座薬を挿れる前に直腸の検査をしましょう」
「え!い、いや、結構です!」
「直腸に異常があると座薬を使えませんので」
「では、飲むタイプの解熱剤を処方してください」
「うちは座薬しか処方してないんですよ」
「な…」

さすがに信じることはできない。そんな病院、聞いた事がない。
今までの流れも明らかに異常だ。思い切って切り出した。

「先生、これは本当に医療行為ですか?私には信じがたいのですが…」
「医療行為ですよ」
「しかし…!」
「じゃあ御剣さん、直腸検査を始めますので力を抜いて下さい」
「は、話を聞い…うっ」

ゼリーを塗られた金属の器具が、肛門に挿し入れられる。
ひやりと冷たいものがじわじわと奥に押し込められる。

「では肛門を拡げます」
「うっ…あっ…」

挿し込まれた器具は私の直腸を中からじわじわと拡げる。
通常は閉じているはずのその部分がくぱぁと開いて行くのを感じる。

「少しずつ開いてきましたね。もっと拡げましょう」
「や…やめ…」
「うん、これくらいでいいかな。アナルの中が丸見えですよ、御剣さん」
「っ…」
「お顔が赤いですよ?恥ずかしいんですか?」
「…!」
「アナルの中を見られているのが恥ずかしいんですか?それとも勃起してるのが恥ずかしいんですか?」
「あなたは…っ!!」


医師はにやにやと品の無い微笑を浮かべて私の顔を見詰めている。
やはり、これは医療行為などではなかったのだと今さら思い知る。

「こ…こんなことが許されると思っているのか!」
「何のことですか?治療を施されて性的興奮を覚えている貴方に、
 咎められるような覚えは私にはありませんよ」
「く…っ」
「何が良かったですか?聴診器?それとも直腸マッサージですか?」

医師が勃起した性器を握って来る。腰がびくつく。

「んっ!」
「溜まってるんですかねえ、御剣さん。精子の溜めすぎは体に良くないですよ」
「さ…わる…なっ…!」
「腰ビクビクしてるわりには強気ですね」
「ふぁっ…!」

尿道口、カリ首、裏筋、医師の手が私の性器に刺激を与えて来る。
同時に開かれた直腸内を指でまさぐられる。びくびくと腰が跳ねる。

「前立腺も良くしてあげましょう」
「やめッ…あぁん!」
「御剣さん、かなり慣れてますねぇココ。淫乱なんですね」
「ちがっ…ふっ…はぁっ…」
「君たちも手伝ってくれる?」
「はい」

医師は、少し離れて待機していたナース2人に声を掛ける。
彼女たちが私の元へ歩み寄る。それぞれ私の両脇に立ち、両側から私の乳首を弄り始める。
乳首、ペニス、前立腺。三つの性感帯がそれぞれに刺激され、私は快感のあまり狂いそうだった。

「あぁん、あっああ、はぁぁん」

激しく身悶える。強い快感に支配され呼吸さえままならない。途切れ途切れの嬌声が漏れる。
医師の手が前立腺をぐっと押し込んだその時、私の中で快楽が弾けた。

「あああっ!!!」

びくりと腰を浮かせた私の性器から、精液が激しく噴き出す。
診察台の上で何度も痙攣を繰り返し、性器からはトロトロと残りの精液が零れ出た。
何度目かの痙攣を終え、私はぐったりと横たわった。胸を上下させて荒い息を吐く。

「はぁ…はぁ…はぁ…」
「気持ちよさそうでしたね、御剣さん。じゃあお薬出しておきますので、お大事に」

ナースたちに拘束を解かれる。医師はすでに机について、カルテにペンを走らせている。
何事もなかったような彼らの態度に、急に羞恥がこみ上げて来た私はそそくさと服を身につけ、
逃げるように診察室を後にした。受付で処方箋をもらい、薬局で薬を受け取る。

「服用薬…」

唇を噛み締め、手の中の薬袋を握り潰した。

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