現場アルバイトに出掛けた糸鋸刑事を見送った、いつもの午前。
読書に興じていると、玄関扉をノックする音がして顔をあげた。
集金かなにかだろうか。ドアの向こうへ返事をすると少し間があったあと、
気弱そうな若い男の声が聞こえた。

「すいません、隣の部屋の者なんですが…」

隣の住民?
そういえばここに住むようになってから一ヶ月以上経つが、隣の住人を見かけたことがない。
糸鋸刑事によれば浪人生が住んでいるらしいが、ほとんど見かけないという話だ。
その隣人が何の用だろうか。無視するわけにもいかないので、玄関の内鍵を開けた。
扉を開けると、色白で痩せた若い男がうつむき加減に佇んでいた。
年は20歳前後というところだろうか。縁無しの眼鏡をかけ、伸びかけた髪が目を隠している。
くすんだ色のトレーナーと色褪せたジーンズ、真っ黒に汚れたスニーカー。
身だしなみには無頓着なようだが、きょろきょろと落ち着かない仕種からは神経質さが垣間見える。

「あ…どうもすみません」
「…こんにちは」

どう対応したらいいかよく分からず、無難な挨拶をする。
相変わらず青年は目を合わせようとせず、黙ったまま立ち尽くしている。

「すまないが今この部屋の主は外出中で…私はただの留守番なのだが」

一応断ってみると、顔をあげた青年が初めて目を合わせてきた。
曇った眼鏡のレンズの向こうから覇気のない目が覗く。

「糸鋸さん、お出かけ中なんですね」

青年が隣人の名を知っていた事を少し意外に思った。

「仕事に行っています。帰りは夜になると思うので、戻ったら訪ねるように伝えましょう」

私の言葉に青年が慌てて首を振る。

「いえ、結構です」
「…はあ」

青年はまたうつむき、黙ったまま佇んでいる。訪問の目的が分からず戸惑う。沈黙が流れる。

「…何か伝言があるなら伝えますが」

私の言葉に青年が顔をあげる。

「あ、あの…最近からここに住んでいるんですよね?」

予想外の言葉に面食らう。

「私が、ですか?」
「はい」

なぜ、隣人が突然このような事を聞きに来るのか理解できない。
第一、個人的なことを詮索されるのは気持ちの良いものではない。
少し憤りを覚えたが、この狭いアパートで暮らしている以上
何か知らぬ間に迷惑でも掛けている事があるのかもしれない、と思い直した。


「そうですが…それが何か?」
「あの…失礼ですけど、あなたは糸鋸さんとどんな間柄なんですか」

動揺のため顔がかあっと熱くなる。また、不躾な質問に腹立ちも覚えた。

「確かに失礼だな。あなたには関係のない事だから、答える必要もない。
 他に用件がないのならこれで失礼する。」

ドアを閉めようとした時、青年の手がそれを阻んだ。

「怒らせてしまったんなら謝ります、すみません。あなたに…伝えておきたい事があるんです」
「私に?」
「聞いてもらえますか?」
「何だろうか」

すると青年はちらりと辺りを気にするそぶりを見せ、言った。

「玄関先では、ちょっと…。あなたの為にも良くないと思うんですが」

非常識な訪問といい思わせぶりな物言いといい、非常に不快だった。
しかし彼の“伝えたいこと”というのが気になるのも事実だった。
刑事が不在の間に隣人とはいえ他人を招き入れるのには抵抗があったが、しぶしぶ入室を許した。
すると、玄関先で対応するつもりだったのに青年は靴を脱ぎ、部屋に上がり込んでしまった。
図々しい態度にもまた怒りが沸く。早く用件を済ませて帰ってもらおうと、話を切り出した。

「それでは単刀直入にうかがおう。私に話したい事とは何だろうか」

私の言葉を受けて、先程まで無表情だった青年の顔に不意に笑みが浮かんだ。
しかしその笑みは決して朗らかなものではなく、人を不快にさせる質のものだった。
意味もなく胸がざわつく。

「じゃあ…お話しします。知ってるかもしれませんがこのアパート、すごく壁が薄いんです。
 だから生活音がつつぬけなんですよ」

薄ら笑いを浮かべる青年の表情からはもう、先程までの気弱さは感じられない。

「どれくらいつつぬけかっていうと…そうだな、鼻をかむ音がしっかり聞こえるくらい」
「ほう、それはすごいな」

生活音が壁を抜けて隣の部屋に届く住居環境というのは想像もしたことがなく、単純に驚いた。

「確かに驚いたが…わざわざ訪ねてきて伝えたい事というのが、壁の話だけではあるまい」
「もちろんですよ。これからが本題です」

青年は口元に嫌な笑みを浮かべながら、声を落とした。

「僕の部屋に、毎晩聞こえて来るんですよ。あなたの…いやらしい喘ぎ声」
「…っ!」

思わず息が詰まった。
燃え上がるように顔が熱くなる。そして自らの日々を振り返る。
心の隙間を埋めるかのごとく、毎日のように糸鋸と求め合っている。
確かに、声の事などまるで意識していなかった。まさか、隣人に丸聞こえだったとは。
激しい羞恥で喉が乾き、うまく発声できない。

「それは…あの…大変失礼した…申し訳ない…」

震える声で謝罪する私に、青年は笑い声をたてた。

「ふふっ、顔が真っ赤ですよ。毎日毎日…お盛んですもんねぇ」

恥ずかしさのあまり涙がにじんでくる。

「喘ぎ声だけじゃないですよ。ピロートークとか、エッチ中の会話まで丸聞こえなんです」

私は俯いて拳を握り締めた。逃げ出してしまいたい気持ちで一杯だった。

「聞くまでもないですけど…男同士ですよね。そんなにいいですか?アナルセックスって」

御剣が黙っていると、青年はクスクスと笑った。

「いいんでしょうね、あんな声出してよがっちゃうくらいには。
 僕いま浪人してるから勉強漬けなのに、毎日いやらしい声聞かされて全然集中できません」
「それは…本当に申し訳ない…今後改めるので…」

消え入るような声で詫びる御剣を無視するように、青年は語り続ける。

「僕もまだ若いんで、あんな声聞かされちゃったらもう、ムラムラしちゃいますよ。
 毎日あなた達がセックスしてる間、僕それを聞きながらオナニーするんです。
 あなたの姿はたまに見かけるんで、僕の脳内で乱れるあなたを想像するんです。
 それくらいいいでしょう?聞こえてきちゃうんだから」

御剣は顔をあげて青年を見た。にやにやとした顔で御剣を舐め回すように見ている。

「でもこうして間近で見ると…確かに、何とも言えない色気がありますよね。
 あの真面目そうな糸鋸さんがハマっちゃうのも頷けるなあ。
 ほら、今のその泣きそうな顔だって、僕ゾクゾクしちゃいます」
「なっ…!」

思わず顔を背けた。

「みつるぎさん、ですよね?糸鋸さんが呼んでます」

黙って頷いた。

「ねぇみつるぎさん。僕もう、妄想の中のみつるぎさんだけじゃ我慢できないんですよ。
 僕にもいい思い、させてくださいよ」
「…冗談はやめろ」
「冗談?これが冗談を言ってる顔に見えますか?」

青年が突然、襲い掛かる。気付いた時には、畳の上に押し倒され青年にのしかかられていた。

「な、なにをするっ…!放せ!」

必死に抵抗するが、青年が腹の上に跨がり全体重をかけてくる。

「糸鋸さんには毎晩かわいく誘ってるじゃないですか。みつるぎさんって、かなりのスケベでしょう?」
「…っ!!やめてくれ!」

青年は暴れる私の腕を掴むと、いつの間にか用意していたベルトで手首を縛り上げる。
その動作は驚くほどスムーズで隙がなかった。

「キサマ…これは、犯罪だぞ…!」

組み敷かれてなお強がる御剣に、跨がったまま青年が笑う。

「そうかもしれませんねぇ。訴えますか?僕のこと」
「こんな事をしてただで済むと思わないことだ!私は…」

そこまで言って言葉に詰まった。
―私は…、検事ではない。今の私はもはや、何者でもないのだ。
その沈黙を服従と取ったのか、勝ち誇った笑みで青年が言い放つ。

「僕にヤラレてみつるぎさんが少しも感じなかったら、訴えてもいいですよ。
 その代わり少しでも感じちゃったら、僕弁護士さんにチクっちゃいますからね。
 みつるぎさんは僕に抱かれていやらしく乱れてました!って」

弁護士、という単語を耳にして不意に一人の男が脳裏に浮かぶ。
私に会うために弁護士にまでなった男。
今回私は彼に何も告げず、検事の職を辞した。
何の相談も断りもなくそうした事を、彼はきっと怒っているだろう。
彼ならば私の居所を突き止めるくらい容易いはずなのに、何の音沙汰もないのが何よりの証明だ。
もし彼が弁護人だったら。見ず知らずの男に抱かれて悦ぶ私を、きっと軽蔑するだろう。

「何考え事してるんですか?みつるぎさん。今から僕にヤラレるって事だけ考えていて下さいよ」

青年は私のシャツを乱暴に剥いだ。
ぶちぶちと音がしてボタンがちぎれ飛び、青年の目に晒される私の裸の胸。

「やっぱりいやらしい体してますね。想像通り…いや、それ以上だ」

青年は不敵な笑みを浮かべ、私の胸に手を這わせてくる。拘束された手では抵抗も満足に行かない。
私は顔を歪め、青年から背けた。

「ねぇみつるぎさん、乳首が感じちゃうんだよね?糸鋸さんが言ってるもんね」

そんな事まで聞こえていたのかと、耳まで熱くなる。

「アハハ、みつるぎさん真っ赤だよ。かわいいね」

青年の指が私の敏感な突起を摘む。快感はなかった。痛みが走り、呻き声が漏れた。
糸鋸刑事の柔らかな愛撫を思い出す。

「みつるぎさんのおっぱい、うすいピンク色で綺麗だね。すごくエッチだな」

青年が私の胸に舌を這わせる。荒々しくねぶるだけの、単調な愛撫。
こんなもの、少しも感じない。感じるはずが、ない。
しかし私自身のそんな思いを裏切るように、荒っぽい幼稚な愛撫が新鮮な刺激をもたらし始める。
私の意志とは無関係に、なぶられる乳首にじわじわと快感が生まれる。
せめて声は漏らすまいと、唇を強く噛んだ。青年が胸元から口を放して顔を上げる。

「ホントに乳首弱いんだね、みつるぎさん!ちょっと勃ってきちゃってるよ」

口元を唾液で濡らしながら嬉しそうにはしゃぐ青年。私は唇を噛み締めたまま首を振った。

「意地張らないで、声出してもいいんだよ」

にやりと微笑むと尖り始めた突起を指先で捏ねながら、首筋に舌を這わせる青年。
青年の鼻息が耳にかかり、思わずぞくりとしたものを感じる。

「やめっ…ろ…!…っく…んッ…」
「そうそうもっと声出してよ、いつもみたいに。いつもすっごいエッチな声出すでしょ?」

耳元で青年が囁きクスクスと笑う。
頭は屈辱と羞恥でいっぱいなのに、愛撫されている敏感な場所は
より強い快感を得ようとその感度を増してゆく。
意思とは異なる反応をしてしまう体が憎い。狩魔豪の影が浮かぶ。
“キサマはいつ何時も、誰が相手でも、悦んで痴態をひけらかす淫乱な男だ”

「また考え事?ダメだよ、集中してね」

青年の指が私の乳首を強く捩った。強い痛みと同時に感じる、異常なまでの快感。

「ん…ッ!」
「へえ、みつるぎさんって痛くされて感じちゃう人?マゾなんだね」
「ちが…ッ」
「糸鋸さんって優しそうだもんね。僕が代わりにいじめてあげようか」

にたにたと笑う青年が私の胸に再び顔をうずめると、感度を増した乳首に歯を立てた。
全身を快感が走り抜けて、のけ反る。

「ふぁ…ッ!」
「はは、マジでMなんだねみつるぎさん。僕もちょっとSっ気あるし、楽しいなあ」
「ちが…う…」
「その涙目いいよ、みつるぎさん。もっと泣かしたいよ」

噛まれたばかりの乳首を、今度は指でぐりぐりと捩り上げられる。

「んああ!やあぁッ」
「えへへ、すごいエロい光景。やっぱ本物はたまんないね」

青年が、跨ったまま私の股間を服の上からなぞる。体がびくつく。

「ほらみつるぎさん、もうこんなに勃ってる!痛くされて気持ちよかったんだ」

勝ち誇るような顔で私の陰部をまさぐる青年。
恥ずかしさ、悔しさ、情けなさ、様々な負の感情が心を渦巻き、目尻から涙が一筋零れ落ちた。

「あはは、泣いちゃった。でも今からは気持ちよすぎて泣いちゃうかもよ」

青年は少し移動し、私のベルトを外すと下着ごとずり下ろした。
はしたなくも勃起してしまった性器があらわになり、反り返った。

「うわあ、みつるぎさんってばやっぱりスケベだねー。ガマン汁でちんぽヌルヌルじゃんか」

声を立てて笑う青年。膝を立てて青年の目から隠そうとするも、脚を押さえ付けられる。

「みつるぎさんは、挿れられてイクのが好きなんだよね。
 いつも糸鋸さんに早く欲しいっておねだりしてるよね」

私の性器を手で扱きながら青年が話し掛けてくる。
指先で性器の先端に先走りを絡め塗られ、腰がびくびくと浮いてしまう。

「もう…やめて…くれっ…」

拘束された両手で顔を覆った。


「泣いちゃうみつるぎさんもエロいよ。ますます興奮しちゃうな」

心の底から楽しいといった様子で青年が私の性器を弄ぶ。
心は張り裂けそうなのに、体がもっと欲しいと快楽を求める。
事実、青年の手の中で私の性器は既に限界まで張り詰めていた。

「どうする?このままイッちゃう?」

青年の手が上下に激しく扱いて来る。昇りつめて行く快感。体がぶるぶると震える。

「んッ…あ…やっ…やめッ…あッ」
「残念!まだイけないよ」

絶頂も間近という時、不意に青年が手を放す。じんじんと快楽に痺れる性器が熱を保っている。

「イきたい?エッチだなー、みつるぎさんは」

自己嫌悪と快感が私の中でせめぎ合う。
果てられない苦しさが手伝って頭の中がぐちゃぐちゃで、何もかもどうでもよくなって来る。

「もう…好きにしろ…」
「ほんと?じゃ、お許しが出たから好き勝手しちゃうね」

青年は私の両足を掴み折り畳むと、あらわになった肛門をまじまじと眺めた。

「これがみつるぎさんのエッチな穴かあ。ねえ、糸鋸さんってちんぽデカそうだよね。
 この穴に入っちゃうの?」

私が黙っていると、青年は無遠慮にその部分に指をねじ込んで来た。思わず、苦痛で顔を歪める。

「痛い?えっと…どうすんだっけ?糸鋸さんはどうやってデカちんぽ突っ込んでんの?」

なおも私が黙ったままでいると、青年は含みのある微笑で言い放つ。

「…ふーん。僕はいいけど?このまま突っ込んでも。裂けちゃうかもね」

憎しみをこめて青年を睨みつけるが、不快なにやにや顔を見せつけられるだけだった。

「…そこに…ボトルがあるだろう…ローションだ」
「あ、これね。これ塗るの?」

指し示した場所にあるボトルを青年が手に取り、それを見るなり笑いだした。

「あはは!超減ってる!あんだけ毎日アンアン言ってりゃ減るかあ。
 ねえみつるぎさん、これっていつも誰が買ってくんの?みつるぎさんが買うの?」

下世話な好奇心でプライベートな領域を踏みにじられ、かあっと顔が熱くなる。

「みつるぎさんがこんなん買うとこ見てみたいなあ〜。アダルトショップとか行くの?
 それとも通販とか?まあいいや、どっちでも」

青年は好き勝手にべらべらと喋りながら、ローションを尻に垂らしてくる。
ひんやりとした感触が肌に触れ、思わず身震いする。

「こんなもんかな?こうやって濡らすんだねー。」

まだほぐれていない肉を強引にこじ開けられ、激しい痛みが走る。
青年はお構いなしに私の直腸内を指で掻き回す。


「前立腺だっけ?性感帯があるんだよね。みつるぎさんのはどこ?」

答えないでいると、青年はあてずっぽうに肉壁を擦り始めた。

「教えてくれてもいいじゃん、その方がみつるぎさんだって気持ちいいのに。
 僕当てちゃうからね。当たったらイイ声で鳴いてね」

青年の指が抜き挿しされる度に、ローションが絡まりくちくちと音が立つ。
始めは見当外れの場所ばかり刺激していた指先が、じんと痺れる場所を探り当てた。

「あ、ここでしょ!何かちょっと硬いとこがあったよ」

いつも刑事の性器が擦り上げてくる場所を、青年が無遠慮にごりごりと擦って来る。
それすらも早々に快感に変わり、体の中心を貫くような快楽が襲ってくる。

「ほらここだ、みつるぎさん超エッチな顔してるもん」

私は青年から顔を背けた。
荒い愛撫でも、私の意志とは裏腹に性感帯は確実に感覚を痺れさせていく。

「んッ…ふぅ…ンあっ…あ」
「ここだね、みつるぎさんが気持ち良すぎて腰振っちゃう場所」

ひとしきり擦ったあと、青年が指を抜き取る。

「ふぁ…」
「うわ、アナルひくひくしてるよーみつるぎさん!超スケベ〜。そんなにちんぽが欲しいの?」

青年は立ち上がり、自らジーンズと下着を脱いだ。
赤黒く屹立する性器が腹に付きそうなほど反り返っている。

「糸鋸さんほどでかくはないかもしんないけど、若さでカバーするからね」

青年は私の前に腰をかがめると、勃起の先端を突き当てて来る。
まだ完全にほぐれきっていないその部分へ、ぐっぐっと力任せに侵入してくる。

「っう…あああ…ああ!!」
「うっ…まだ…固いね…きっつ…」

裂かれるような痛みが襲い苦痛の声を上げるが、青年はお構いなしに突き入れて来る。

力づくで挿入された性器が私の奥深くへ届く。全て入り切ったようで、青年がほうっと息をついた。

「すっごい締めて来るねーみつるぎさん」

青年は腰を振り始める。単調な、変化のない突き。
けれど、青年の性器にある高めのカリ首が私の肉壁を擦り、痛みはやがて快感へ変わってゆく。

「はぁっ…あっ…ん…」
「良くなってきた?アナルもだんだん馴染んで来たね」

肉を打つ音が狭い部屋に響く。
こんな音すら隣人のこの男に聞かれていたのだろうか、とぼんやり思った。

「みつるぎさん聞かせてよ、いやらしい声。僕が隣で毎日聞いてた、喘ぎ声」

青年に性感帯を擦り上げられ、私の性器ははちきれんばかりに膨張していた。

「はぁっ、あぅん、あぁ、あん」
「そうそう…もっと声聞かせて、みつるぎさんのエロい声…ああ…最高だよみつるぎさん…」

青年はうっとりとした表情で私の中を味わっている。
乱暴な突きなのがもどかしい。しかしそのもどかしさが、却って快感をいや増す。
私の横に両腕をついて、真上から顔を見下ろしてくる青年。はあはあと息が上がっている。

「毎日、この部屋で、こんな顔で、やらしい事してんだ…ほんと淫乱だね、みつるぎさん」

脳裏に哀しげな表情の糸鋸刑事が浮かぶが、ぞわぞわと沸きあがってくる快感が押し流す。

「あん、も、い、イく、ふあっ」
「アナル突かれて、はぁ、イっちゃうんだね、みつるぎさん」

青年の腰の動きが一層激しくなる。同時に、全身が浮遊するような感覚に襲われて腰が浮く。

「イくッ…い…イくぅッ…!あああ!!」

頭が真っ白になりぶるぶると体が震え、性器の先端から精液が溢れだす。

「あぁ…はぁ…はぁ…」
「あっはは、マジでイッちゃった、すっげ、エロいね」

射精の余韻に浸る間もなく、青年が続けて突いて来る。はあはあと荒い息が顔にかかる。

「あれぇ、みつるぎさん、泣いてるの?ははっ」

青年に揺さぶられながら、私の目からは涙が溢れていた。
あれほど私に献身的に尽くしてくれる刑事を裏切ってしまった。
心が引き裂かれるように痛む。

「みつるぎさんの、アナル、はあ、マジ最高…ああ〜イキそう…イク…っ!!」

青年がびくびくと痙攣し、私の中へ射精した。
挿入したまま恍惚とした表情で余韻を味わう青年を見上げる目から、涙が溢れて止まらない。
余韻を味わい終えた青年は私の中からぬるりと性器を取り出すと、
まるで自分の家でするようにティッシュで汚れを拭い取る。拭き終わると、服を身に付けた。
仰向けに転がされたままの私はそれをぼんやりと見ていた。

「ああ〜、すっげ良かったー。これはハマるねホント!あっいけね、忘れ物」

青年は私の手からベルトを外した。それでジーンズを締めながら玄関に降り、靴を履く。

「じゃあねみつるぎさん。今度から糸鋸さんとヤル時も僕にヤラレちゃったこと時々思い出してね」

満足そうな笑顔でひらひらと手を振ると、扉を開けて出て行った。
私はそのままの姿勢で呆然と横たわっていた。ただ溢れる涙だけが止まらなかった。

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