「御剣ちゃん、今夜空いてる?」

上級執務室への突然の電話。
愛層のいい気さくな口調が却って胸をざわつかせる。
声の主は私の返事も待たず二の句を継いだ。

「御剣ちゃん、ジャズ好きだったよね?
 今夜のチケットがあるんだけど、どう?食事でもした後ゆっくりと」

本音を言えば、どうにか上手くかわして断るつもりだった。
しかし私が断るよりも先に、声の主は強引な調子で話を進めていく。

「じゃあ、待ってるからね」

断るタイミングを失った私は頷くよりほかなかった。


その夜、重い足を向けた先にはにこにこと笑顔を振りまく警察局長がいた。

「遅かったじゃない」
「申し訳ありません、出掛けに暑苦しい刑事につかまっていまして」
「まあいいよ、まずは食事だね。行きつけの店に部屋取ってあるから」
「はい」

高そうな料亭で懐石料理を振る舞われた。
しかし笑顔で饒舌に語る巌徒局長を前に、味など少しも分からなかった。
彼の笑顔は好きになれない。

食事を済ませてすぐにコンサートホールへ向かった。
局長と一緒というのが居心地こそ悪いものの、生の演奏を聴くのは久しぶりのことだ。
少し心を動かされた。

「御剣ちゃん、席こっち」

局長に誘われた先は、上質なシートがゆったりとしたスペースで10席ほど並んでいる
いかにもVIPらしい空間だった。そのシートの中ほどに並んで腰を掛ける。

「他の観客はまだ来ていないようですね」

一般席はほぼ満席状態だが、私たちの周囲―いわゆるVIP席―には1人もいない。

「ん?そうだね」

何でもない事のように局長は聞き流した。
結局、VIP席にはだれも来ないまま演奏が始まった。

シートに深々と腰掛け、旋律に耳を傾ける。
やはり、生の音楽はいい。
迫力のある演奏に興じていたのも開始後わずか10分ほどのことだった。


―おかしい。

何か体が奥のほうから熱い。
熱でも出たのだろうか。
火照る顔に手を当てる。
吐く息が熱い。
体調不良ということで失礼しようか。
そんなことを考えていた時だった。

隣に座る局長の手が伸びて、私の膝に触れた。
その瞬間激しい電流が体中に流れたように、私の体はビクリと跳ねた。
反射的に局長の顔を見る。

暗転された会場内、ステージを照らす照明でかろうじてその表情が読み取れる。

局長が笑っている。
今にも笑い声が漏れそうな表情だ。

「どうしたの?御剣ちゃん。様子がおかしいね」
「あ、あの…なんだか、熱があるようで…」
「ふうん。どうしたのかな、さっきまで元気だったのにね」

そういった局長の手が私の内腿をさっと撫でた。

「はうっ」

思わず声が漏れる。
触れられた部分が火傷でもしたように熱く、ビリビリと痺れるようだ。

―やはり、おかしい。

呼吸が浅い。

「熱があるの?」

そう言って局長が私の耳たぶに触れた。

「んっ」

ゾクリと全身の肌が泡立つ。
クックと局長が笑って、耳打ちしてくる。
吐く息が耳に掛かって、またぞわぞわとした感覚が全身を走る。

「効いてきたかな」

 !?

バッと身を反らし、局長の顔を見る。楽しそうに私を見ている。

「…どういうことですか」
「食後のお茶にね、ちょっと」


なんだって。
体の芯が燃えるようなこの熱は、何か盛られたせいなのか。

「…帰ります」

怒りを抑えた口調で言い放ち、席を立とうとする。
が、その瞬間局長の逞しい手が私の腕を掴み、引き寄せた。
反動で、シートに沈み込む。

「意地張らないの、御剣ちゃん。」

またも耳元で囁かれる。
頭の芯が熱く、思考までとろけそうだ。

「は、離してくれ…っ」

この場から立ち去らなければ。
そう思う一方で局長に掴まれた腕が燃えるようだ。

「体が熱くて、疼いて、仕方ないでしょ?」

そう言った局長の手が伸びてきて、布越しに私の股間に触れた。

「んっ…ふ」
「あれえ」

局長がにやにやと笑う。

「もう、硬くなってきてるよ?御剣ちゃん」
「や…やめて…くれ…」

息が乱れる。
股間を下からすくいあげるように手でなぞられ、ビクッと体が震えた。

「うん、いい反応するねえ御剣ちゃん。こっちもゾクゾクするよ」

逃げ出したいのに、体が動かない。
もはや服が擦れるだけで、全身の皮膚が感じ入るようだ。

股間を弄る局長の手が、ゆっくりとファスナーをおろす。

「やめ…」

指が下着越しに性器に触れただけで、ビクンとのけ反ってしまう。

「すごく効いてるねえ。それとも御剣ちゃんが元々感じやすいの?」


クスクス笑いながら局長の指先は器用に、ファスナーの間から下着を避け、
私の性器だけを取り出した。周囲に誰もいないとはいえ公共の場で勃起した性器が
あらわになっている。顔が燃えるように熱いのは羞恥のせいか、それとも―

「うわあ御剣ちゃん、ガマン汁でトロトロじゃない。えっちだねえ」
「はぁ…きょ、局ちょ…、や、やめ…はあ」

肘掛をぎゅっと両手で強く掴む。
こうでもしていないと、どうにかなってしまいそうだから。

局長の指が、分泌物で濡れる先端をなぞった。

「んっ…!」

ビクッと痙攣し、肘掛を握る手に力がこもる。

「相変わらずいい声で鳴くねえ、御剣ちゃん。」

局長の逞しい手が、漏れ出る分泌物を絡めながら
勃起する性器を握り上下にこする。

「んああ!やめ…あっ、はっ」

一層激しくビクンとのけ反ると、あっけなくも果ててしまった。
ドクドクと脈打ちながら次々に吐き出される白い精液が、局長の手を汚す。

「あれれ、もうイっちゃった。すごい効き目だねえ」

局長は私の精液で汚れた手をペロリと舐めた。
私は椅子の上にぐったりと横たわり、はあはあと荒い息を吐く。
演奏がなければ他の観客にも気づかれていただろう。

「御剣ちゃん、僕のここも、ホラ。君がいやらしいからさ」

そう言って局長はファスナーを下ろすと、自らのものを取りだした。
勃起したそれは、先ほどの私と同じように透明の液が滴れ濡れ光っていた。

「舐めて。」


まるで当然であるかのように、平然と言い放った。
しかし私も、吸い寄せられるかのように股の間へ顔をうずめると、
パンパンに張りつめたそれを口の中にほおばった。

「うん、いいよ。気持ちいい」

椅子にゆったりと腰掛けた局長が満足そうにつぶやく。
局長の股に顔をうずめていると、先ほど果てたばかりの自分の性器が
いつの間にかまた熱を帯びて膨張しだしていた。
ほとんど無意識に、自分で握りしめゆっくりと擦る。

「んっ…ふう…ム…」

私の吐息の乱れに気づいた局長が見やる。

「御剣ちゃんってばフェラしながらオナってるの?君はほんとに淫乱だねえ」

満足そうに笑うとゆっくりとシートに身を沈め目を閉じた。

もはやここがコンサートホールであることなど、意識しなかった。
雄の匂いと感触を口いっぱいに感じながら、局長が達するまでに
私は二度果てた。

丹念に舐め上げ、ようやく達した局長の精液を口いっぱいに含むと、
言われるがままに飲み干した。
口の端に零れた精液を局長の指がぬぐった。

おさまった性器を服の中に仕舞い、ファスナーを上げながら言った。

「御剣ちゃん、まだまだ満足しないでしょ?相当効いてるみたいだもんね。
 すぐそこのホテルに部屋取ってあるから、連れて行ってあげる。
 死ぬほどイかせてあげるからね」

局長に引きずられるように、コンサートホールを後にした。

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