毎年恒例の、検事局と警察局の合同忘年会もいよいよ佳境に入った。
誰の手によるともなしに、隣り合った部屋のふすまがすらりと開けられた。
その奥には上質の布団が敷かれた薄暗い和室がひっそりと広がっていた。
それを合図に、何本もの手が一斉に御剣の身体を捉える。美しい蝶を捕獲するように。
――毎年恒例だ。

「今年はどういう趣向がいいかな? 御剣ちゃん」
赤い襦袢に着替えさせた御剣を、当然の権利だというように押し倒し、布団に縫いとめた男は警察局長の巌徒だった。
半強制的に飲まされた酒のせいで動きが緩慢になった頭脳と肉体を、御剣は早々に放棄していた。
どういう趣向であれ、目の前の男に犯される結果は変わらない。
御剣が黙っていると、巌徒の手が襦袢の襟元から侵入してきた。
胸をいやらしく撫でまわし、乳首を執拗に弄くる指に、御剣の呼吸が徐々に荒くなる。
前合わせを開かれ、快感に色づく肌をすべて露わにされた。
行燈のやわらかい灯りのなか、御剣が身悶えるたびに、淫らな肉の陰影が浮かび上がる。
始まった――。あとは終わるのを待つだけだ、と御剣が目を閉じようとした時。
「そろそろ入ってきていいよ」
巌徒が部屋の外に声をかけた。
ふすまが細く開けられ、蛍光灯の光が御剣の裸体を舐めた。
ふすまの向こうに立ってこちらを見下ろしているのは、見覚えのない男だった。
逆光で表情はよく見えないが、この状況を目撃して慌てた様子もない。
「な、に……?」
「御剣ちゃんは知らないだろうねえ。まあ、僕の仕事関係のヒト、とだけ言っておくよ。――キミはこれから知らない男に抱かれるんだ」
巌徒は御剣の怯んだ顔を愉快そうに眺めながら、自分の腰からベルトを引き抜いた。
「手を縛ってあげるよ、御剣ちゃん。抵抗できない理由が欲しいだろう?」



巌徒はさらに、枕元にあった襦袢と同じ生地の帯で、御剣に目隠しを施した。
「御剣ちゃんが怖がるといけないから」と白々しい理由を吐きつつも、「いやらしいねえ」という本音は隠そうとしなかった。
のしかかってきた身体が、確かに巌徒と違う男のものだと御剣には分かった。
頬を、首筋を、腋下を、全身を。濡れた舌が這い回る。
そのうち、明らかに巌徒と最初の男だけでは計算が合わない数の舌や手指が御剣を苛みはじめた。
両耳に同時に違う舌を突っ込まれ、乳首も左右で別々の舌に愛撫されている。
尖らせた舌先でへそをほじくっている者もいる。
口を開かされ、唾液や精液を流し込まれれば、しかたなしに嚥下した。
張り詰めた性器は複数の手で奪い合うようにもみくちゃにされた。
尻の穴には誰のものとも知れぬ雄を埋め込まれ、媚肉を掻き毟るように激しく出し入れされる。
かなりの人数の男がこの狭い部屋にいるのは確実なのに、誰も一言も発しない。
ただ、ハッハッ、という獣じみた息と、御剣のすすり泣くような艶声が響くだけ。
たまにメンバーが入れ替わるためか、ふすまが開閉する音がし、そのたびに清涼な外気が流れ込んできて、この部屋の爛れきった空気に気づく。
精液も出尽くし勃起しなくなった性器をしゃぶられながら、御剣は際限なく達し続けた。
始まってからどれくらい経ったのか。いつになったら終わりがくるのか。
「やっぱり御剣ちゃんって最高だねえ」
久しぶりに聞いた気のする巌徒の声も、もう御剣の耳には入らなかった。

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